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 ジャン・ユンカーマン監督『映画 日本国憲法』(シグロ社、2005年)の「読本」として制作された本。アメリカ、日本、韓国を代表する知識人によるインタビュー集をはじめ、日本国憲法を理解するために必要な資料(大日本帝国憲法、ポツダム宣言、憲法調査委員会試案)が収録されている。

 特に、ジョン・ダワー、ノーム・チョムスキー、ベアテ・シロタ・ゴードン、チャルマーズ・ジョンソン、日高六郎、韓洪九によるインタビュー全文は読みごたえがある。ここには、日本の「外」から、日本国憲法の意義や可能性を捉えようとする視点がある。

 例えば、『敗北を抱きしめて』の著者、ジョン・ダワーは、一般に「押しつけ憲法」と呼ばれてきた日本国憲法の草案が、どのようなプロセスを通して書き上げられたのかを語っている。ダワーによれば、日本の「対米追従」が深刻化したのは、日本国憲法の制定時ではなく、1950年に勃発した朝鮮戦争によって、アメリカの対日政策が変化して以降のことだという。このダワーの証言が浮き彫りにするのは、日本国憲法を「(アメリカによる)押しつけ憲法」として決めつける改憲論者たちのご都合主義的なロジックである。事実、彼ら改憲論者は、日本国内に多くの米軍基地を「押しつけ」てきたアメリカの対日政策に関しては、一片の疑問すら抱こうとしないのだから。

 日本国憲法の草案執筆者として、どこの国の憲法にも明記されていなかった「女性の権利」を盛り込もうとしたベアテ・シロタ・ゴードン。タカ派の論客として出発しながら、世界中の米軍基地を調査する過程で、「軍事基地帝国」としてのアメリカ合州国の素顔に気づいたチャルマーズ・ジョンソン。アメリカ主導の対外戦争が、「弱者をいびるための戦争」であり続けてきた第二次大戦後の歴史を的確に抉りだすノーム・チョムスキー。彼らが口をそろえて語るのは、日本こそ、世界史上まれに見る内容を持つ日本国憲法を活用することで、国際社会のオルタナティヴな動きを主導できる、という力強い証言である。(T.T.)

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